イスラエル最高の文学賞「エルサレム賞」を受賞した
村上春樹さんのスピーチが胸を打つ。
イスラエルによるガザ攻撃がつづくなか
村上さんに受賞辞退を求める声も多かったという。
そんななか、賞を辞退して沈黙することより
表現者としてメッセージを伝えに行くことを選ばれた。
勇気のいることだと思う。
そのスピーチの全文試訳がこのブログに載っていた。
"Between a high, solid wall and an egg that breaks against it,
I will always stand on the side of the egg."
「私が、高く堅固な一つの壁とそれにぶつけられた
一つの卵の間にいるときは、つねに卵の側に立つ。」
強いものと、弱いもの。どちらが正しいのかそれを問うのではなく
弱いものが間違っていたとしても、私は弱いものの側に立つと
言い切れる強さ。村上さんの小説家としての信念。
私には想像もつかない立場で、判断することさえ難しい。
一人一人が想像して、考えなくてはいけないことなのだろう。
でも、戦争とは別のことに対しても
自分たち一人一人が薄い殻に包まれた、かけがえのない、
取り替えのきかない存在なのだ。ということを
自分も他の人も。もっと意識して生きていくことによって
もう少しだけ、きっと世界はより良いものになると思う。
大きな壁を制度、卵を私たち一人一人だと例え、
私たちは「大いなる制度」とやらに搾取されてはなりませんし、
独走させるわけにはいきません。
「大いなる制度」が私たちを作ったのではなく、
私たちが「大いなる制度」を作為したのです。
と投げかけたメッセージが、
少しでも武器を向け合う人に響けばいいと思う。
戦争からかけ離れた世界にいると
テレビで報道されている出来事は
現実感が薄く、あまりに遠く感じられてしまう。
でも、村上さんがお父さんの背中から感じたこと。
わかる気がする。
お祖父ちゃんが戦争の話をしてくれた時にはいつも
お祖父ちゃんを哀しい空気みたいなものが包んでた。
私を怖がらせないように、そっと微笑んだ顔が
なんだか寂しそうなのを感じてた。
そういうものを忘れないようにしなくてはいけない。
村上春樹さんの小説は好きで何冊も愛読しているが
ご本人のスピーチを聞いて、なんていうか
あぁ、小説は村上さん自身なんだ。
うまくいえないけど、彼を構成しているものが文字となっている
そんなことを思った。
なんだか酔っぱらったり、あたふたしている政治家の方たちにも
確固たる信念ってものがあるなら
もう少しみせてくれてもいいのに とも思う。
そして楽な方へ流されがちな最近の私にも
なにかを投げかけられている気がする。